春に洗われた野に

身籠ったと分かった朝

春が
空を背負って駆け下りてきた
わたしの中へなだれ込んできた三月の
清々しい勢い
土を押し上げて発芽した植物のように
わが子が育っているのか
この季節が
わたしを母親に変えていく
 
なんて明るい空の色だろう
乳房が
やわらかい水音を立てる
誕生という言葉が 今
ゆっくりと
呼吸し始めた
守るべきものが在る
守りたいものが在る
わたしの重心がぶれを止め
しっかりと地球の中心に向かうのが分かる
 
芽吹くもの
蠢くもの
開くもの
たぎるもの
飛び立つもの
数え切れないほどのいのちの気配が
ふつふつと
胎内の温度を上げていく
 
春に洗われた野に
わたしは
一本の木を植えたばかりだ
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