スイートピー

娘が秋に蒔いた種が

冬を迎え
年を越す
静かに静かに
時間を紡ぎ
娘の嫁入り仕度を
見守った
春、娘は嫁いだ
 
親の思いの
ひとつひとつ
心の入り口は
混み合っているのに
思いは
列をなして
並びつづける
寂しいとか嬉しいとか
はっきり分けられないものが
一気になだれこみ
私は、私を見失った
 
咲いた
そんな折、咲いた
娘の蒔いた種は
赤やうす桃の
スイートピーになり
心の外にこぼれたものも
そっと包んだ
 
ひと月以上ものあいだ
つぎつぎと
花は生まれ
生まれては
まず私を呼ぶ
私は花の周りに
音符を
ふりまきながら
日々を過ごした
 
私は、私をとりもどした
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