快感原則

残業帰りのいつもの列車は

最終列車ほど酔客はいないが
溜息客は多くて
互いの背中に ポトリポトリ
 
働きアリは
きちんと働き きちんと休むらしいが
一行 また一行と 豊かな行間を求め続ける
わたし人間アリは
重い身体とカバンを抱えたまま
セキタテセキタテ
 
壁にぶつかれば 相対性理論を説き
難解だが 誤解は解かぬまま
詩など書いて 生を支える背骨を鍛えている
 
腕立てふせ十回と懸垂二十回の代わりに
「ヒヤリとしたい」と百回言い
「ウレシイ」を口癖にする
理屈抜きの快感原則
 
列車の窓に映る わたしの顔は
「ウレシイ」という言葉の力で
クックッと微笑むことができる
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