800-21

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 でかいこと言ったけど、俺、七着だった。早く言えばビリから二番目。最後の直線でボロボロ。
 さえないの。
 さすがに県大会になると速いやつがけっこういるのねえ。広瀬に負けたのも悔しい。他はトシいってるやつらだけど、こいつは、同じ一年なんだから。
 伊田は待っててくれたのよ。ちゃんと。
 八〇〇は、ほら、ちょうど二周するからスタートとゴールがいっしょのところでしょ。位置について、で、かがみこむときにチラッと見えてた。
 ウォームアップ・スーツ着てたって目立つの、当然。さすがに合図する余裕はなかったけど。
 ゴール・インして、俺、フラフラ。
 伊田のところまで歩いてって、息ぜいぜいさせながら、
「負けちまったぜえ」
 って言って、しゃがみこんだ。
 かっこ悪いよねえ。なにしろこのひとは、去年、一年で優勝しちゃったって経歴の持ち主なんだから。
 立ってる伊田の足もとで、俺、まだ肩で息してんのよ。それ以上、冗談も思いつかない。
 そしたら、軽く頭をこづかれた。
「あんた、いつも、あんなレースしてんの?」
 俺、ばかにされてるんだなって思ったぜ。
 そういう話し方なのよ、伊田って。低い声で、鼻で笑うみたいにしゃべんの。
 俺が見上げたら、
「あんなさ、最初からトップに立って、一周目のラップも取って、抜かれるまで一番でいく気なの?」
 どう答えたらいいのかわからないから、
「ああ」
 って言った。
 伊田はもう一回、俺の頭をこづいて、
「何も、頭使ってないんだ」
 そして、フッ、と笑うと、
「気持ちいいレースだね。将来、有望だよ」
 ちょっと、嬉《うれ》しかったね、これは。
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