『論語』の衛霊公篇-29

[白文]29.子曰、人能弘道、非道弘人也、 

 
[書き下し文]子曰く、人能く道を弘む(ひろむ)、道人を弘むるにあらざるなり。 
 
[口語訳]先生が言われた。『人間が道を広めるのであり、道が人間を広めるのではない。』 
 
[解説]孔子が『道』としての思想(主張)・理念・理想を広める道理について語った部分で、『思想あっての人間』ではなく『人間あってこその思想』だと語っていることは興味深い。孔子は人間によって思想や理念が広められていくと述べているので、キリストや釈迦、ムハンマドのような宗教家とは異なる人間中心主義のパーソナリティの持ち主であった。儒教の背景にも『天の思想』や『葬儀の祭礼』というのは確かにあるのだが、孔子は怪力乱神を語ることを好まず、人間の思惟や判断を中心にして己の思想に磨きをかけた側面がある。 
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