『論語』の雍也篇-18

[白文]18.子曰、質勝文則野、文勝質則史、文質彬彬、然後君子。

 
[書き下し文]子曰く、質、文に勝るときは則ち野(や)、文、質に勝るときは則ち史(し)、文質彬彬(ひんぴん)として然して(しかして)後(のち)君子なり。
 
[口語訳]先生が言われた。『内容の質が文章表現を上回ると(文盲の)野人となる、文章表現が内容の質を上回ると文士になる。表現と内容が渾然一体となったところで初めて君子となるのである。』 
 
[解説]古代中国では識字率が非常に低かったこともあり、文字表現のリテラシー能力(読み書き能力)があることは貴人や官吏(士大夫)、君子であることを意味する部分があった。ここでは『文』を『文章表現』というように単純に直訳したが、質には『質朴』の意味があり、文には『装飾』の意味が込められている。その為、文はもっと本質的には『礼の表現』を意味しており、具体的な行動や儀礼によって礼を形にして表現するといったことを含意している。孔子は儒教的な礼制として『質』と『文』の二つを考えており、周王朝は文(装飾)の礼制を洗練させたというように解釈していた。『質(実質)』と『文(表現)』のどちらに偏っても、完全な礼の実践は覚束ないのであり、孔子は君子たるものは質と文の双方を適切に調和させなければならないとした。
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