『日本を読む』 18

いじめについて

 
 去年大阪でいつもいじめられていた高校2年の男子2人が彼らをいじめていた同級生を何十回もなぐって川に投げ込み殺すという事件があった。また、今年はじめには、中学2年の女子が友達に、「死んでしまえ」、「馬鹿」などと何回も教科書に落書きされ、それを苦にして首をつって死ぬという事件があった。去年1年間で、このような「いじめ」事件は531件あり、その関係で補導された子供は約1900人、そのうち3分の1は女の子だった。又、「いじめ」が原因で7人も子供が自殺し、そのうちの1人はまだ小学校4年生だったそうだ。ここで最近の「いじめ」の特徴について少し考えてみよう。
 
 まず、大きな特徴は、同じ子どもが、いじめられたり、いじめる側になったりすることだ。昔の学校では、「ガキ大将」がいて、彼が絶対的な力を持っていて「いじめ」の中心となり、いじめられるのはクラスのなかの弱い子供だった。ところが、最近ではいつもいじめられる弱い子供も、ほかの子供がいじめられると、いじめる子と一緒になってその子をいじめる場合が多いそうである。それは、もしほかの子供と一緒になっていじめないと、後で自分が再び「いじめ」の対象になる可能性があるからである。つまり、弱い者が又いじめられるのを恐れて、加害者の側に回るわけだ。
 
 次に、教師・親との対話不足によって、解決できる問題も解決されない場合が多いことが特徴だ。科学技術が発達するにつれて、学校で勉強する内容が非常に難しくなってきていて、子供は毎日毎日勉強で忙しいし、専業主婦が少なくなり、働く女性が増加しているので、親と子供が家でゆっくり話をする時間が少なくなっている。又、昔は何か問題があるとすぐ教師に相談したものだが、今の子供は、自分達だけで問題を解決しようとして、教師に相談したがらない。もし誰かが教師に話をすると、「告げ口」と見なされ、「いじめ」の対象にされることが多い。そこで、いじめられたくない子供は何も言わなくなり、教師も対話不足のために子供達の間で何が起こっているかわからなくなるわけだ。
 
 又「いじめ」の対象になる理由も様々だ。「背が低い」とか「足が短い」などという肉体的特徴のためにいじめられるのは昔からあった。ところが最近は、肉体的特徴のみか良い面での目立つ特徴でもいじめられることがある。ピアノが上手にひけるとか、海外帰国子女で英語が上手に話せるとか、何か特徴があることは大変素晴らしいことである。しかし、この頃は、このような特徴も「いじめ」の対象になっている。クラスのなかにいくつか集団があり、集団の一員として皆と同じようなことをしていさえすれば問題はない。が、ほかの子供と比較して長所となる点を持っているとそれも今の子供の世界では「集団の和」を乱すと考えられ、「いじめ」の対象になってしまう。
 
 「いじめ」や「いじめ」への仕返しが凶悪化、陰湿化していることも大きな特徴のうちの一つである。はじめに述べたように殺人事件は極端な例であるが、ほかにも、いじめた子供の家に放火したり、恐喝したり、暴力をふるったりする凶悪な犯罪が増えている。又、弱い子供をバイキンのように取り扱ったり、靴のなかにゴキブリを入れたり、全く無視して全然話をしなかったり、物を隠したりする陰湿な「いじめ」も急激に多くなっている。
 
 去年一年間に531件も「いじめ」事件があったと前に述べたが、この数は実際にあった「いじめ」事件のうちの一部分に過ぎないであろう。「いじめ」の問題は、現在の教育制度、受験制度、親子関係、教師と子供の関係などと密接に関係しているので、容易には解決できない問題である。できるだけ早い時期に、教師、親、子供が協力してこの問題を解決しようとしないと、将来の日本にとって極めて深刻な問題になる恐れがある。
 
 
☆ 次の質問に答えなさい。
 
1.いじめの特徴を3つあげなさい。
 
a.
 
b.
 
c.
 
2.いじめられる子供がいじめる子供になるのはどうしてですか。
 
3.子供達が問題を教師に相談したがらないのはどうしてですか。
 
4.昔からあったいじめの対象になる理由は何ですか。
 
5.長所になるような特徴がどうしていじめの理由になるのですか。
 
6.いじめやいじめへの仕返しの具体的な例としてどんなものがありますか。
 
7.いじめの問題はどうして容易に解決できないのですか。
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