ウサギとカメの、その後のお話し

 むかしむかし、ウサギとカメがかけ比べをしました。 

 足のはやいウサギが勝つのに決まっているのですが、油断したウサギはつい昼寝をしてしまって、カメに負けてしまったのです。 
 これは日本にも世界にも伝わる、とても有名な昔話ですが、これはそれからのお話しです。
 
 さて、カメに負けたウサギが、しょんぼりとウサギ村に帰ると、ウサギ村のみんなはかんかんに怒って言いました。 
「カメに負けるようなウサギは、ウサギじゃない。お前なんか、出て行け!」 
「そ、そんな・・・」 
 こうしてカメに負けたウサギはウサギ村から少し離れた山で、しょんぼりと一人ぼっちで暮らし始めたのです。
 
 それから何日かたったある日の事、カメに負けたウサギは、小鳥たちが木の上でこんな話をしているのを聞きました。 
「ねえねえ、ウサギ村は、とても大変な事になっているそうだよ。
 なんでもオオカミに、子ウサギを三匹差し出せと言われたらしいんだ。
 ウサギ村の親ウサギたちは、悲しくて泣いているそうだよ」 
 カメに負けたウサギはそれを聞くと、 
「これは、神さまがくれたチャンスだ!」 
と、喜んで、大急ぎでウサギ村にかけて行きました。 
 そしてウサギ村のみんなに、大声で言いました。 
「みんな! おれがオオカミをやっつけてやるよ。だからもしうまくいったら、またここでくらしてもいいかい?」 
 すると、親ウサギたちが言いました。 
「本当かい! そうしてくれたら、喜んで仲間に入れてあげるよ」 
「よし、約束だよ」 
 カメに負けたウサギは張り切って、オオカミの住んでいる崖(がけ)へ出かけて行きました。 
 そしてオオカミを見つけると、カメに負けたウサギはオオカミに頭を下げました。 
「やあやあ、オオカミさま。
 今すぐここへ、子ウサギ三匹連れて来ますよ。
 ですが子ウサギは、オオカミさまのお顔が怖くて近よれないと泣いて困らせるのです。
 どうか連れて来るまで、崖のすみっこで谷の方を向いて待っててくれませんか?」 
「そうか、ではそうしてやるから、早く連れて来い」 
 オオカミは言われた通り崖のすみっこに座ると、谷の方を向きました。 
(よしよし) 
 カメに負けたウサギは、そーっとオオカミの背中に近づくと、 
「えいっ!」 
と、力いっぱいオオカミを突き飛ばしました。 
「うわぁー!」 
 突き落とされたオオカミは叫び声をあげながら谷底へ落ちていき、二度と帰っては来ませんでした。 
「やったー! オオカミをやっつけたぞ! これで村に帰れる!」 
 カメに負けたウサギは大喜びでウサギ村に帰り、それからは仲間たちといつまでも楽しく暮しました。 
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