男だけ、七人の子供がいる父親がいました。そこで、どうにかして女の子が欲しいと願ねがっていました。そして、とうとう八番目ばんめに女の子が生まれたのです。でも、赤あかちゃんはとても体からだの弱よわい子でした。ある日、父親は一人の男の子に言いました。「赤あかん坊ぼうのために、泉いずみから水を汲くんでこい。」一人の男の子が駆かけ出だすと、残のこりの六人も後あとを追おいかけました。そして井戸いどの傍で押合おしあいをしているうちに、壺つぼを井戸に落おとしてしまったのです。子供たちはどうしていいか分からず、べそをかいて立っていました。
父親は、戻ってこない息子に腹(はら)を立てていました。「あんな悪餓鬼(わるがき)どもは、鴉(からす)にでもなってしまえ。」そう怒鳴(どな)ると、頭の上を黒い七羽の鴉が飛(と)び去(さ)ったのです。
父親は、心から悲(かな)しみました。そして、女の子をなおいっそう大切(たいせつ)に育(そだ)てました。女の子は賢(かしこ)い娘(むすめ)になりました。
ある時、娘は七人の兄のことを人の噂(うわさ)で知りました。娘は、父親に聞きました。「私の七人の兄さんたちはどこへ行ってしまったのですか。」「分からん。皆神様のお考(かんが)えだ。探(さが)しても無駄(むだ)だよ。」父親は答えました。
でも、娘は母の思(おも)い出(で)が詰(つ)まった指輪(ゆびわ)を持(も)って、こっそり兄(あに)たちを探(さが)しに出(で)かけました。歩いて歩いて、とうとう世界(せかい)の果(はて)までやってきました。そこでは太陽がじりじり照(て)り付(つ)けながら、子供を食べていました。娘は逃げ出して、月の所に行きました。でも、月は冷たく光(ひか)っているだけでした。娘は星(ほし)の所に逃げました。星たちは親切(しんせつ)でした。星たちは、娘にガラスの山に入る鍵(かぎ)を渡(わた)してくれました。娘は、その鍵を持って、ガラスの山に入りました。中には小人(こびと)がいました。「何の用事(ようじ)だ。」小人が言うので、答(こた)えました。「鴉になった兄を探しに。」「鴉様は今お出(で)かけだ。」
テーブルにご馳走(ちそう)を入(い)れた七つの皿(さら)と、飲み物を入(い)れた七つの杯(さかずき)が置いてあります。娘は、とてもお中がすいていたのですが、全部の皿と杯から少しずついただきました。そして、最後に杯に、家から持って来た指輪(ゆびわ)を入れて置きました。
やがて、七羽(しちわ)の鴉が戻ってきました。娘は陰(かげ)に隠(かく)れました。鴉達たちご馳走(ちそう)を食(た)べ始(はじ)めました。そして、七番目の鴉が杯を飲(の)み干(ほ)すと、指輪が出てきました。「おお、妹が来てくれたんだ。呪(のろ)いが解(と)けるぞ。」娘が陰から出ると、鴉は皆、元通(もとどお)りの人間(にんげん)に戻ったということです。
生词
汲む(くむ) 汲,打(水等液体)
追いかける(おいかける) 追赶
押し合いする(おしあいする) 互相推挤
壺(つぼ) 壶
べそをかく (小孩等)哭鼻子
腹を立つ(はらをたつ) 生气
悪餓鬼(わるがき) 坏小子
なお 更
賢い(かしこい) 聪明,伶俐
噂(うわさ) 传言,谣传
無駄(むだ) 徒劳,白费
指輪(ゆびわ) 戒指
こっそり 悄悄的,偷偷的
果(はて) 尽头,止境
じりじり (阳光)灼热
鍵(かぎ) 钥匙
隠れる(かくれる) 隐藏,躲藏
飲み干す(のみほす) 喝光,喝干
呪い(のろい) 咒语,诅咒
语法注释
1.歩いて歩いて、とうとう世界の果までやってきました/走啊走啊,终于走到了世界的尽头。
同一动词的重复,表示加强语气。
△ テレビを見る見るうちに寝てしまった。/看着看着电视就睡着了。
△ 食べて食べてやっとお腹がいっぱいになった/吃啊吃啊,好不容易才吃饱。
2. 娘は、とてもお中がすいていたのですが、全部の皿と杯から少しずついただきました。
副助词“ずつ”前接表示数词、比例、程度的名词、副词等,表示数量、比例、程度。
△ 患者を一人ずつ見る/每人看一名患者。
△ 三人に一つずつ分ける/每三人分一个。
3. 小人が言うので、答えました。/因为小矮人问,所以就回答了。
接续助词“ので”前接用言连体形后,表示原因、理由。
△ 雨が降り出したので出掛けませんでした。/因为下雨所以没出门。
△ 風が強いのでほこりがひどいです。/因为风大,尘土飞扬。