イソップ寓話-ヤギ飼いと野性のヤギ

 夕暮れ時、ヤギ飼いが、ヤギの群れを放牧地から移動させていると、群れの中に野生のヤギが混ざっ ていることに気づきました。そこで彼は、野生のヤギたちを、自分のヤギの群れと一緒に、囲いの中に入れておくことにしました。

 翌日、雪が激しく降ったため、ヤギ飼いは、ヤギたちをいつもの牧草地へ連れて行くことができずに、やむなく、群れを囲いの中に留めおきました。そして、彼は、自分のヤギには、飢え死にしない程度にしか餌を与えませんでしたが、新参者たちには多くの餌を与えました。と、いうのも、こうすれば、 彼らをうまく手なずけられるのではないかと考えたからです。
 翌日、雪が解けはじめると、ヤギ飼は、ヤギたちを牧草地へと連れて行きました。ところが、野生のヤギたちは、一目散に山の奥へと逃げて行きます。彼は、逃げて行くヤギたちに向かって、「吹雪の時にあんなに世話をしてやったのに逃げるとは、なんて恩知らずなんだ!」と叫びました。
 すると、一匹がクルリと振り向いて言いました。 「我々が用心するのは、そこなんですよ。あなたは、長年慣れ親しんだヤギたちよりも、我々を大切にした。ということは、もし、我々の後に、また別の者がやってきたら、あなた は、同じように、新しい方を大切にするでしょうからね」
 
【教訓】 新しい友人のためといって、古くからの友人をないがしろにしてはならない。
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