幼年時代

こわい夢が

天から降った晩がある。
おっかさんが柱を支えて
おとっつあんが
床板の目を踏みはずす。
マッチを擦って
悪さをした晩は、
小便袋が
西瓜玉ほどふくらみやがる。
 
口笛吹いて
廊下の木戸を
そっと開けると、
つぶった瞳に
赤顔の鬼が浮かんで消える。
 
頬をなでたのは
きっと
ばあちゃんの言ってた
小さい皿の河童の風だ。
 
夏の夢はことさらに
厠の窓を狭くする
汗をふきふき
尻をふきふき
まばたきしている黄色い電燈。
 
虫の音と
かけっこして、
誰もいない庭をわたると
湿っ気た蚊帳の
青い匂いがなつかしい。
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