伊豆の踊り子 ~川端康成

 ◆伊豆の踊り子 ~川端康成

   伊豆の旅に出た一高生の私は、天城峠で出会った踊り子の清純な姿にひかれ、その旅芸人の一行と下田まで道づれとなる。瞳の美しい薫(かおる)という名の踊り子は14歳、おとなびて見えるため、私は踊り子の今夜が汚れてしまうのではないかと、眠れぬ夜を過ごす。しかし、翌朝、湯から裸で飛び出して手を振る踊り子の子供っぽさに、私は心に清水を感じて微笑する。孤児根性で歪んだ私も、踊り子に「いい人ね」と言われて、心が澄み渡る。旅費の尽きた私は、下田で踊り子と別れて船に乗り、別離の感傷に浸りぽろぽろと涙をこぼす。

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