部屋

私の家は 線路沿いにある 列車が通るたびに 部屋で聴いているラジオの声が かき消されてしまう   鍵のかかった窓や レースのカーテンを すりぬけて 雷を呑みこんだ 夕立のような 音の網で ラ...
阅读全文

快感原則

残業帰りのいつもの列車は 最終列車ほど酔客はいないが 溜息客は多くて 互いの背中に ポトリポトリ   働きアリは きちんと働き きちんと休むらしいが 一行 また一行と 豊かな行間を求め続ける...
阅读全文

トマトの時間

畑のトマトに 水をやる 乾いた土が潤って 呼吸のかたちが見えてくる 朝から夕べ 夕べから夜明け 青いトマトは 休むことなく 時間を織ってゆく   はっきりとした意志で 身体をつくり たおやか...
阅读全文

ホワイト

秋の夜ひとり 心しらじらと スタンドだけつけた部屋は そこだけ 白い円 アルバイトの帰りに見た 交通事故を思い出して 読みかけの文庫本をふせる   信号が赤にかわったのに 強引につっこんでき...
阅读全文

ホワイト

秋の夜ひとり 心しらじらと スタンドだけつけた部屋は そこだけ 白い円 アルバイトの帰りに見た 交通事故を思い出して 読みかけの文庫本をふせる   信号が赤にかわったのに 強引につっこんでき...
阅读全文

我が子への鎮魂歌

あゝ又コトコトと乾いた音が聞こえる……。 お前が淋しがっている。 現世の忙しさにふっとお前を忘れかけると かならずコトコトと耳許でささやきかける。 無理もない お前はまっ暗...
阅读全文

黄色い花

何も識らなかった時は 月見草の花の名前さえ、知らなかった 片想いに苦しんだ昔、それが 宵待草の別名があると識った そして今、少しだけど、人生のアクをつけ 人の心が、不透明乍ら見え出したら 何と、この花...
阅读全文

コミュニケーション

喫茶店のかたすみに いまにも崩れそうな弱さを 必死にささえている二人がいる 日焼した心が ふっと、ドラマテイックに 駆け出したくなる天気ですネ   二枚の便せんを 手に持ったまま息をつめ ま...
阅读全文

幼年時代

こわい夢が 天から降った晩がある。 おっかさんが柱を支えて おとっつあんが 床板の目を踏みはずす。 マッチを擦って 悪さをした晩は、 小便袋が 西瓜玉ほどふくらみやがる。   口笛吹いて 廊...
阅读全文

Lサイズなる話

とりあえず一瞬の懐想のあと 爽快に「ええ、元気です。」と 受話器に言葉を交わす 気がつけば時間と近況が 無制限に「あら、そうなの。」と ファッションみたいに一変してゆく   かきたてるような...
阅读全文