「もらえなかった花束」

 花が大好きな私なのに、夫からは一度も花束を贈られた事がない。  もう十五年も前アメリカで長女が生まれた時の事である。ポケットサイズの辞書を持参で入院、日本で長男のお産の時とは随分違う多くの体験が得ら...
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「かやつり草」

 雨あがりの今朝の草取りは、気持ちがよくさわやかである。  五月の細い雨が静かに降りそそぎ、庭の苔を明るく緑の絨緞に変えてしまった。その苔の上に、雑草たちがお天気になるのを待ちかまえたかのように、今朝...
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「ホトケノザ」

 八月、静かな昼下り、涼しくした居間の棚に、ホトケノザの写真が立てかけてある。  二十五センチと三十センチの大きな写真の真中に、ホトケノザの頭頂がアップで写っている。細い花首を伸ばした花が四輪開き、長...
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「ひばりの声」

 去年の四月、私は買い物に行くとき、電線の上でさえずる雲雀を見た。帰ってから、夫に話すと、そんな馬鹿なと云って相手にしてもらえなかった。その翌日、家の近くで、電線に止まっているのを見てあわてて家へ帰り...
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「読み聞かせの天使」

「読み聞かせをしてもいいですか?」  乳幼児健診の待合室で声をかけられた私は、戸惑っていた。膝(ひざ)の上の息子はまだ10か月。これで何人目かな? 次はどんな言葉を残して去るのかな? 「はい。お願いし...
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「西瓜」

 四月下旬、私は茄子やトマトなど夏野菜の苗を買い畠に植えた。私の畠というのは、弟の広い畠の一部を一坪程借りて耕している。  今年は、初めて西瓜一本が畠の仲間入りをした。西瓜の場所は南の端っこ畳半畳程で...
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「ねこたちの夜」

 六十歳で仕事をやめた時、まわりには誰もいなかったし、何もなかった。夫は早くに亡くなり、息子はひとり暮らしをしていた。  毎日がお休みで……と喜んでいたのは、はじめの一週間...
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「帰ってきた「父の遺書」」

 骨髄せんい症という難病で、入退院を繰り返した母が逝った。残された父も、母の三回忌をすませると肝臓を病んだ。  父は戦後幾つかの職を転々とした後に、国立療養所の事務官に採用された。 「試験が作文と口頭...
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