大きなスイカ

 むかしむかし、あるところに、とても貧しいお人好しの男がいました。

 小さな畑をたがやして、その日その日を暮らしていました。
 
 春になったある日、男が畑をたがやしているとコウノトリが飛んできました。
「ああ、コウノトリが来る季節(きせつ)になったのか」
 空を見上げていると、どうしたことかコウノトリが下に落ちてきたのです。
 男がかけよってみると、片方の羽がおれています。
「かわいそうに、助けてやらなくては」
と、家に連れて帰りました。
 おれた羽を手当して、男は自分の子どものように世話をしてやりました。
 何日かたってやっと元気になったので、男はコウノトリを空へ飛ばしてやりました。
「元気でな!」
 男は手を振って、コウノトリが見えなくなるまで見送っていました。
 
 あくる年の春。
 男が畑をたがやしていると、コウノトリが飛んできました。
「もしかして、あのコウノトリでは?」
と、男が空を見上げていると、コウノトリが何かを落としました。
 ひろってみるとそれは、スイカのタネです。
 スイカのタネは、三粒ありました。
「はて? このタネを、まけというのかな?」
 男はスイカのタネを、畑にまきました。
 タネは芽(め)を出し、つるがのび、大きな花をさかせました。
 男が一生懸命世話をしたおかげで、スイカは大きくなりました。
 男は三つ取って家に持って帰りましたが、一人ではとても食ベきれません。
「そうだ、友だちをよんでこよう」
 男は、大勢の友だちをよんできました。
「立派なスイカだな」
 男はスイカを切ろうとしましたが、切れません。
 二つ目のスイカも、切れません。
 三つ目のスイカも、切れません。
「切らずに、ほうちょうでたたいたらどうだい」
「ああ、そうしてみよう」
 男は、思いっきり強くたたきました。
 するとスイカは、ポコンと割れました。
「あれっ!」
「まあ!」
「これは!」
 何とスイカには、金貨がいっぱいつまっていたのです。
 ほかの二つにも、金貨がつまっていました。
「さあ、みんなでわけよう」
 みんな貧しかったので、大喜びで金貨をもらいました。
 
 さて、近くにお金持ちの男が住んでいました。
 欲張りな男で、この事を聞くと畑へ行ってコウノトリをさがしました。
 いました。
 エサを食べています。
「しめた!」
 お金持ちは、そっと近よると、棒でコウノトリの足をなぐりつけました。
 コウノトリがたおれると連れて帰って傷の手当てをして、毎日世話をしました。
 やがてよくなったので、空へ飛ばしてやりました。
 
 あくる年の春になって、お金持ちは畑に行きました。
「今日は来ないか? 今日は来ないか?」
と、お金持ちは、毎日畑に行きました。
 待ちくたびれてイライラしているところへ、やっとコウノトリが飛んで来ました。
 コウノトリがタネを三つ落としたので、お金持ちはすぐに畑にまきました。
 まもなく芽が出て、つるがのび、花がさいて、大きなスイカになりました。
 お金持ちは、やっぱりお金持ちの友だちを大勢呼びました。
 そしてスイカをほうちょうでたたくと、ポカッと二つに割れましたが、中につまっていたのは金貨でなくて、なんとも大きなハチだったのです。
「ブーン!」
 たくさんの大きなハチたちはいっせいに飛び立つと、お金持ちやお金持ちの友だちにおそいかかりました。
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