秋(1)

その一

 
わたしの足あとが無い
ここに こうして立っていたのに
わたしの足あと
砂は無情か さらさらと くずれて
おまえさんには 用が無いとばかりに
消してゆく
 
生とは? 死とは? ゆっくり
語りあえる 友も私も時間がないのです
坂を越えて 坂の向うに
何があるのか
友も わたしも知らない
(あるとすれば焦慮かも)
 
髪を染めて 髪型を変えて
身なりを整えても
時間は 私を待ってくれはしない
砂丘に陽が沈んで
わたしの足あとが消えても
あしたは 新しい陽が
砂丘に昇るでしょう
 
私は歩く 今日もあしたも
老いさらばや 老いさらばや
呪文のように 口ずさみながら
わたしの足あとが
たしかに地につく日まで
 
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