宇宙の声(03)

プーボ

 
 
 ミノルとハルコとキダは、基地の長官の部屋へ行き、これまでのことを報告した。長官はうなずきながら言った。
「なるほど、テリラ星からふしぎな電波が出ていて、それがここのアンテナにはいり、子供に変な夢を見させているというのだな」
「そうです、ぜひ調査に行かせてください」
 キダがたのんだが、長官は首をふった。
「しかし、この基地では、ほかにも重大な仕事がたくさんある」
「そうかもしれませんが、これをほっぽっておいて、あとで手におえなくなったら大変です。早く調べたほうがいいと思います」
 三人が熱心にたのむと、やがて長官は言った。
「よし、許可しよう。だが、その探検に基地の人員をまわすわけにはいかない。きみたち三人と、プーボとを行かせることにしよう」
 そして、腕時計型の電話でプーボにここへ来るよう命じた。みながプーボとはどんな人かと待っていると、まもなくドアがあいた。はいってきたのはロボット、長官にあいさつをした。
「プーボです。お呼びでしょうか」
「ああ、この三人といっしょに、テリラ星への調査に出かけてくれ」
 それを見てハルコが言った。
「あら、ロボットのことだったのね。でも、こんな新しい型のは、はじめて見るわ」
 いままでのロボットのように、ゴツゴツした感じではなく、スマートだった。動きもすばやそうだ。長官は説明してくれた。
「そうだ、最新型なのだ。これまでは金属製ばかりだったが、これは特殊なプラスチックで作られている。プラボットと呼ぶ人もあるが、もっと簡単にしてプーボなのだ。さあ、プーボ、空中に浮いてみせろ」
「はい」
 と、プーボは答え、胸を大きくふくらませたかと思うと床から浮き上がった。ミノルは目を丸くし、長官に質問した。
「どんなしかけなのですか」
「体内で軽いガスを発生させたのだ。からだが軽いのでそれができる。しかし、丈夫なことや力の強いことは、金属製のよりはるかにまさっている。そのほか、いろいろなことができる。どんなことができるかは、本人から聞いてくれ。いままでのロボットの十台分の働きをするだろう」
「それは大助かりです。さあ、プーボくん、出かけよう」
 と、キダが言った。
 三人とプーボを乗せた宇宙船べータ3号は基地を出発し、星々の輝く宇宙の旅をつづけた。ミノルとハルコは、すぐにプーボと仲よしになった。
「プーボくんのすぐれた力を見たいな。ねえ、なにかやってみてよ」
「なにをやりましょうか」
 こう話し合っている時、警報のベルが鳴り、宇宙船内の電気がまたたき、光が弱くなった。操縦席でキダが大声をあげた。
「機械のようすが変だ。出発を急いで、点検が不充分だったためかもしれない。大変なことになった……」
 修理をするには電源を切らねばならず、そうなると計器も止まってしまう。飛んでいる|隕《いん》|石《せき》をよけることができないため、事故が起きやすいのだ。
「それでしたら、わたしにおまかせください」
 プーボは機械部分のふたをはずし、なかをのぞきこんでいたが、奥のほうに手を入れて、電線のよじれを簡単になおしてしまった。そして、とくいそうに言った。
「金属製でないため、高圧の電気や強い磁石にさわっても平気なのです。また、指先もしなやかなのです」
「なるほど、そうだね」
 みなはほっとし、すっかり感心してしまった。
 それから、プーボはミノルとハルコに、宇宙服のとりあつかい方法とか、非常食の食べ方などを教えてくれた。ミノルはふしぎそうに聞いた。
「そんなこと、プーボに不必要な知識だと思うけど、どうして知ってるんだい……」
「あなたがたに教えるためですよ。わたしは学校の先生もできるのです。さあ、よく勉強してください。ここでは、ずる休みはできませんよ」
「わあ、変なことになっちゃったわ……」
 ハルコは笑い声をあげた。しかし、ふたりは時間表を作って、プーボにいろいろと教わることにした。ほかにすることもない宇宙船のなかだ。ぼんやりしていてもつまらない。
 宇宙の旅がつづいた。ミノルとハルコはときどき、あの水玉もようのついた赤い玉の夢を見た。それは、しだいにはっきりし、基地で見た時のように、ゆがんでいなかった。テリラ星に近づいたため、途中の電波の乱れがなくなったのだろう。
 こうして、宇宙船はテリラ星のそばまできた。
 キダはみなに言った。
「まず、どこかに着陸し、地上のようすを調べることにしよう」
 ベータ3号は注意をしながら高度を下げた。あたたかい星らしく、植物がよく育ち、森が多かった。そのため、着陸の場所をさがすのにひまがかかった。だが、やっと小さな平地をみつけ、そこへ着陸することができた。
「さあ、早く出てみましょうよ」
 と、ミノルとハルコが叫んだ。人類がはじめて訪れた星だと思うと、興奮してしまうのだ。
 窓から外をながめていると、森のなかから、なにかが立ちのぼった。よく見ると、それはたくさんの鳥だった。黒くて大きくて強そうな鳥だ。それを指さしてプーボが言った。
「外へ出るのはお待ちなさい。あの鳥たちが人間をどう迎えるか、まず、わたしが出て、ためしてみましょう」
 そして、宇宙服を着て外へ出た。すると空を飛びまわっていた鳥たちが、いっせいにプーボめがけて襲いかかってきた。
 一羽や二羽ははらいのけたが、こうたくさんでは、どうにもならない。
 プーボは光線銃で十羽ほどうち落としたが、鳥の数は多かった。急降下し、鋭いくちばしで突きたてる。それがくりかえされると宇宙服に穴があき、ぼろぼろになってしまった。プーボは宇宙船に戻って報告した。
「わたしだから、よかったようなものですよ。気ちがいみたいに、むちゃくちゃな鳥が支配している星ですね」
 その宇宙服を見て、みなはぞっとした。特殊プラスチック製のプーボだから助かったが、人間だったらやられてしまったところだ。
 キダは顔をしかめて、腕を組んだ。
「こんな星に文明があるとは考えられない。なぞの電波を出しているのはどんな相手で、なんのためなのだろう。しかし、こんなありさまでは、調べるのにひと苦労だな」
 その時、ハルコが悲鳴をあげた。
「あら、こっちにもむかってくるわ……」
 鳥たちは窓のなかに動くものがいるのをみつけたのだ。宇宙船の窓をめがけて、急降下をはじめようとしていた。
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