『論語』の八イツ篇-05

[白文]5.子曰、夷狄之有君、不如諸夏之亡也。

 
[書き下し文]子曰く、夷狄(いてき)の君あるは、諸夏(しょか)の亡きにも如かざる(しかざる)なり。
 
[口語訳]先生が言われた。『(中国の外部にある)夷狄の蛮族が君主を戴いても、君主のいない夏(か)のような中国(先進的な文明国)には遠く及ばない。』 
 
[解説]中国の伝統的な世界観である「華夷秩序」を典型的に表現した文章である。古代の中国では、漢民族(中国人)の国々を文明の中心地を意味する「中華」と称し、文化や技術の遅れた周辺の諸国(蛮族の国)を「北狄・東夷・西戎・南蛮」と称して差別意識を持っていた。古代のギリシア人も、自分たちをギリシア神話に登場するオリンポスの神々の子孫である「ヘレネス」と称し、周辺の後進国を「バルバロイ(意味不明の言語を話す民族=野蛮人)」と別称していた。 中国最古の王朝「夏」の子孫を自認する古代の中国人もそういった民族的な優越感(矜持)を強く持っていたのである。諸夏の「夏」とは、伝説の聖王・禹(う)が建設した夏王朝のことであり、諸夏とは夏を継ぐ中国の王朝といった意味で、中国の漢民族の国々のことを指している。
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