『論語』の為政篇-03

[白文]3.子曰、導之以政、斉之以刑、民免而無恥、導之以徳、斉之以礼、有恥且格。

 
[書き下し文]子曰く、これを導くに政を以ってし、これを斉える(ととのえる)に刑を以ってすれば、民免れて恥なし。これを導くに徳を以ってし、これを斉えるに礼を以ってすれば、恥有りて且つ格し(かつただし)。
 
[口語訳]先生(孔子)がこうおっしゃった。『人民を導くのに法制をもってし、人民を統治するのに刑罰をもってすれば、人民は法律の網をくぐり抜けて恥じることがない。人民を導くのに道徳をもってし、人民を統治するのに礼節をもってすれば、人民は(徳と礼節を失う悪事に対する)恥を知りその身を正すようになる。』 
 
[解説]孔子の理想とした政治のあり方とは、有徳の君子が「仁・義・礼・智・信の徳」をもって率先垂範を旨とする政治にあたることであり、人民に道徳や良心を植え付けることで「自律的な社会秩序」を構築することであった。故に、孔子が始めた儒教は、悪事をした人間に懲罰を与えて痛めつけたり自由を奪うことで犯罪や無礼を抑止しようとする「法家」(韓非子・李斯)とは正反対の政治思想といえる。孔子は、「人民の恐怖(処罰)」によって秩序を維持する政治を行うことに反対し、「人民の徳化(教育)」により自発的な社会秩序を生み出そうと尽力したのである。
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