『土のこやし』07

7.布施(ふせ)利行(りぎょう)同事(どうじ)
 
 人はコミュニティ、つまり仲間のなかで生きる者だとして、そのコミュニティをうまく維持する、あるいは人心をまとめ、治める、4つの方法として、仏教では四摂法(ししょうぼう)というのがいわれます。すでに述べた愛語のほかに布施(ふせ)利行(りぎょう)同事(どうじ)というのですが、ついでに説明しましょう。
 
 「布施」というのは与えることです。与えるものは金品に限りません。知識を与える、つまり人にものを教えてあげる、これもそうです。ただし見返りを期待してはいけません。それでは取引になってしまいます。互いに無償で与え合う、これはオレのものだとこだわらない、そういう気持ちでいる、そこにいい関係が成立するというのです。
 
 「利行」は人のためにつくす、自分ではなく人を利する行いをする、そういう事です。もとより見返りを望まずに、です。今、ボランティアなどといわれるのはこれでしょう。これは分かりやすい。
 「同事」とは協力していく、互いに助け合い、協同していく、そういうことです。もっと単純には、相手と同じことをしていくことです。体験的にもみんなでわいわい言いながら、同じ仕事をしていく、そこに親しみが生じる、あるいは自分と同じことをあの人もやっている、その人に親しさを感じます。
 
四摂法とは、布施、愛語、利行、同事の4つですが、それは言い換えれば、与える気持ち、やさしい言葉をかける気持ち、相手のためをはかる気持ち、何でも一緒にやる気持ち、そういうことです。そしてその根本には見返りを期待することなくというのが入ります。ここが難しい。しかしこういう気持ちを持っていれば、コミュニティはうまくいくし、また本来コミュニティは、ひいては人間生活はこういうものであればいいわけです。
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